Respect リスペクト


1.配慮とリスペクト

 

どんなに気をつけていても、ほかのカップルとの接触はしばしば起こるものです。”そっちが下手だから”ではなく、そこは同じフロアを共有するお互い様。その時点で、または曲と曲の間などに、お互い謝っておきましょう。リーダーはフォロワーに謝らせないようにすると品良く見えます。

 

他のカップルと接触する頻度が高い場合、踊り方や踊る位置取りに何らかの問題があるかもしれません。状況にあった踊り方・配慮ができるように心掛けましょう。


2.Tanda タンダ + Cortina コルティーナ

 

一般的なミロンガでは、曲構成が

Tango タンゴ ✕ 4曲

Vals ワルツ ✕ 3曲

Milonga ミロンガ ✕ 3曲

この3〜4曲のカタマリを“Tanda タンダ”といいます。

 DJによって、タンゴのタンダ2つのあとに、ワルツのタンダまたはミロンガのタンダを挟みながら選曲されていきます。

Tango タンゴ ✕ 4曲
◆Cortina
Tango タンゴ ✕ 4曲
◆Cortina

Vals ワルツ ✕ 3曲
◆Cortina
Tango タンゴ ✕ 4曲
◆Cortina
Tango タンゴ ✕ 4曲
◆Cortina

Milonga ミロンガ ✕ 3曲

 
DJは、タンダの選曲を楽団・曲調・歌手・録音時期などの要素を揃えて、ダンサーたちが踊りやすいよう、混乱しないようにフロアをコントロールする重要な役目を担っています。
さまざまなDJの選曲のセンスもミロンガの楽しみのひとつです。

タンダとタンダの間には“Cortina コルティーナ”と呼ばれるタンゴとは関係のない曲が掛かります。これはスペイン語で“カーテン”を意味し、一旦フロアをリセットするという目的があります。コルティーナが掛かったら、一度フロアの外に出ましょう。

 

しばしば、コルティーナでサルサやロックンロール、チャカレラ、サンバなどのダンスの曲をDJが意図的に掛ける場合があります。その場の空気が許しそうなら踊るのも良いでしょう。

 

コルティーナの時点では次がどのようなタンダになるかわかりません。実際にお相手を誘うのはそれがわかってからにしましょう。

お相手は、そのタンダだったら他に踊りたい方がいるかもしれませんし、誘ってみたけどミロンガが掛かったのでやめよう、というのはかっこ悪いですね。


3.ダンス中は曲とダンスに集中/踊る前はコミュニケーションを

 

曲が始まってもすぐに踊り始める必要はありません。初めての方をカベセオで誘えたなら、お互いに軽い自己紹介があるといいかもしれません。積極的な会話は相互理解を深め、心の距離が近くなればさらに良いタンゴを踊れるようになるかもしれません。

しかし、あまり長く会話していると踊る時間がなくなってしまいます。続きは後ほどにして、ダンスを楽しみましょう。そして、踊り始めたら会話をやめ、相手と周囲、曲に集中しましょう。

踊らずに座っているかたへさりげなく視線を送り、アピールすることもお忘れなく。

『なにを話せば良いのかわかりません』というかた。

 名前を伺ったり、好きな楽団、曲、タンゴをはじめてどのくらいなのか、よく行くミロンガはどこなのか、このミロンガはよく来るのかなどの当たり障りのないことを聞いたり、“素敵なドレスですね” “かわいい靴ですね” “そのピアス素敵ですね” “オシャレなシャツですね"などと褒め言葉を掛けてみるのもいいかもしれません。

しかし、まだよく知らないお相手の個人的なことについて聞くのはマナーとしては良くないでしょう。ナンパまがいの行為は慎んでください。


4.紳士淑女として

 

 リーダーは、タンダが終了し、コルティーナが掛かったらすみやかにお相手をエスコートしてフロアを空けます。決して自分だけ戻ってお相手をフロアに置き去りにしてはなりません。もとの席に、またはお相手が行きたい所にエスコートするまでがダンスです。


リーダーもフォロワーも、踊りの相性がいい、楽しかったからといって、過度・不必要に体を密着させたり、触ったりするような痴漢セクハラ行為と受け取られかねない動きしつこく相手の連絡先等個人情報を聞き出そうとするようなことは厳に慎んでください。そのような行為を受けた場合、目撃した場合は主催者に相談しましょう。

 

また、アルコールが提供もしくは持ち込みできるミロンガでは、飲酒はほどほどにしましょう。ほどよくアルコールが回った状態は楽しいものですが、酩酊状態では自分が怪我をするならまだしも、他者を怪我させることにもなりかねません。節度をもって楽しみましょう。


5.ミロンガは“本番”

 

 相手が初心者の場合、どうしても親切心からステップやアブラッソの方法をアドバイスしたくなります。また、アドバイスを求めたくなります。しかしミロンガはレッスンやプラクティカではない、いわば真剣勝負の“本番”です。教えたり、教えを請うたりするのは慎みましょう。

 

特にリーダーは、もしステップがうまくいかない場合、相手にそのステップを教えたくなりますが、教えないとできないステップを相手に求めるのはやめましょう。相手のレベルがまだあなたに追い付いてないのかもしれませんし、そもそもあなたのリードでは伝わらないのかもしれません。

また、“あなたのリードでは踊れない” “フォローが悪いから全然踊れなかった”なども、思っても口に出さないように気をつけましょう。

まだミロンガの参加経験が浅い初心者のフォロワーを、断られない(強く断れない)のをいいことに、しつこく何度も誘うリーダーがいます。お相手が本当にあなたと何度も踊りたいのか、ほかに踊りたい方がいるのではないか、いまは脚を休めたいのではないか。一旦落ち着いてみましょう。


6.最後に

 

ミロンガにおける以上の“Códigos コディゴ”は一例に過ぎません。さらに、それぞれのミロンガにローカルのルールがある場合は、それに従えばその場の雰囲気を乱さないで過ごせるでしょう。

しかしながら、そのミロンガの雰囲気が自分には合わないかもしれません。いろいろ試した結果、それでも馴染めない場合は、別のミロンガに行き、好みのミロンガを探しましょう。知らぬ間にタンゴ仲間がたくさんに増えているかもしれません。

 

一見難しそうに思える“Códigos コディゴ”も、大人として、社会生活上、“周囲と上手くやる”ための一般的な振る舞いであると思いませんか?あまりに考えすぎて固くなったり、ぎこちなくなったりせず、タンゴが大切にしているものに少しでも近づきたいですね。

 

フォロワーもリーダーも、“自分が気持ち良く踊る”ではなく“相手を気持ち良く踊らせる”ことを心がけましょう。そして、相手や周囲、ミロンガの場、タンゴをリスペクトする心を持ってください。そうすればあなたもまた、リスペクトを受けられるでしょう。

 

 

“あのミロンガでは誰も踊ってくれない”と嘆くより、日頃からレッスンに励み、“Códigos コディゴ”のポイントをしっかり押さえて積極的に周囲とコミュニケーションを図れば、あなたのミロンガ体験をより素敵なものにする助けになるでしょう。